ちなみにそのシルバーレンズで、たった今何をやっているかというと、写真ギャラリーではブリッシオ・サントスという写真家によるモノクロの写真展。マカティーをテーマに無機的な対象を撮影し、ざらっとした手触り感覚のあるマチエールで印刷した作品。
それからSLabでは、バコロド出身の画家チャーリー・コーの個展。チャーリーは私も20年近く前から知っている社会派シュール・リアリスト。今回は木炭で描いた15枚の絵。いつもながらユーモラスで不気味だ。
そして一番小さくて四畳半くらいの20スクエアというスペースでは、ベア・カマチョという女性作家の"Disconnect The Dots"という作品展。このベア・カマチョはちょっと面白い人なので紹介しておく。中華系フィリピン人で26才。コンセプチャル・アートの新星だ。18才でアメリカのハーバード大学に留学し、アート・環境学科をトップで卒業したという才媛。最近フィリピンのアートシーンでちょくちょく名前を聞くようになった。
それで今回の作品は下のようなもの。
フィリピンの社会問題として、海外移住、頭脳流出、ディアスポラなど様々な機会で議論され、いろんなかたちで表象されるけど、彼女の作品は無味乾燥としたあくまでもフラットなもので、これが抽象というのだろうが、良く考え抜かれていて面白いと思った。
その彼女の作品展だが、ほぼ同じ内容ものをシルバーレンズの近くに昨年オープンしたフィナーレ・アート・ギャラリーhttp://www.finaleartfile.com/でも開催している。同じ内容の展覧会を二つの異なるギャラリーで同時にやるところが面白い。
このフィナーレは、かつてのギャラリーのメッカであるSMメガモールにショールームを持っていた老舗画廊だが、昨年このパソンタモ・エクステンション通りに移転。倉庫街の一角で大きなスペースのギャラリーをはじめた。いま話題のスペースだ。元倉庫だからとにかくでかい。現在はワイヤー・トゥワゾンという画家のスーパーリアルっぽい油絵が展示されている。
あの懐かしいスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」がモチーフの大判油(96インチ×144インチ)だけど、1枚100万円の値がついていた。不思議となんでもよく売れるフィリピンの現代美術市場だが、彼の作品も7枚中3枚も売れていた。ちなみにこのワイヤー氏は、アンゴノに住んでいて、あのネオ・アンゴノのリーダーだ。ネオ・アンゴノとは今年11月のフェスティバルでアジアのアーティストや研究者を集めて一緒に大きな国際セミナーをやる予定で、今から楽しみだ。
このパソンタモ・エクステンション界隈にはまた別のギャラリーが近く新規オープンするようで、これからも目を離せない。さらには最近話題のケソン市のノース・エドサにもいくつかギャラリーがオープンしたようだ。ちょっと前まではグローバルシティーが最先端だったが、今はノースエドサとトライノーマ。にわかに活気付いている新しいアートスポットについては随時調査して報告する。
1 comment:
復活お待ちしていました。
P誌で一瞬お世話になったTです。
今はそこで仕事はしていませんが、
あいかわらずマニラ生息中です。
アート情報、本当に勉強になります。
展示会やふれるべきアートの情報がなかなか
マニラ在住日本人ではゲットしにくいので、
詳細に説明してもらいながらふんふん勉強もでき
じゃ、行ってみよう!と思える、貴重な情報源です。
ありがたや。
更新楽しみにしています。
お忙しいとか思いますが、ムリなさらぬよう。
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